協立製作所(葛飾区お花茶屋3、TEL 03-3604-8485)が製作するセルロイド雑貨が、葛飾ブランド「葛飾町工場物語」として認定され、話題を呼んでいる。
「葛飾街工場物語」は、葛飾区と東京都商工会議所葛飾支部が区内で生産された技術や製品・部品などを「葛飾町工場物語」と認定し、その製造背景やエピソードをストーリー性豊かに情報発信していくことを目的にされた制度。今年度は10社の技術・製品が認定され、その一つとして同社のセルロイド雑貨の技術が認定された。
同制度に認定されると「葛飾街工場物語」を漫画などで紹介する冊子の作成・配布や、見本市や産業フェア出展などを区・同支部が支援する。
同社は創業43年の「町工場」として、金型やプラスチックの成形などをメーンに手掛ける企業。飲料水の自動販売機のサンプルや、玩具に使われる部品などを製造し、その技術力には定評がある。同社の奥山和雄社長は、創業前にセルロイド職人として活躍し、その後独立。創業時もセルロイド玩具を取り扱っていたが、「石油由来のプラスチック製品に押され、次第にセルロイドを取り扱わなくなった」と話す。
セルロイドは樟脳(しょうのう)を原材料とする樹脂のことで、主に玩具や雑貨を中心に取り扱われていた。戦前から多く国内で生産されおり、最盛期の1933(昭和3)年には世界の生産量の40%を占め、世界一の生産国となった。葛飾区は全国でもその生産量が多く、戦前・戦後には多くの工場が立ち並んだ。だた、セルロイドは可燃性があり、米国の輸出規制などもあることから次第に石油系のプラスチックが普及。以後、衰退していった。
同社がセルロイド雑貨の製造を再開したのは2007年秋。奥山社長に友人から「葛飾のセルロイドを復活させよう」と提案があったことが契機となった。同時期、大阪にあった唯一のセルロイド雑貨工場の閉鎖に伴い、工場から金型や素材を購入。自社の倉庫に眠っていた機材をメンテナンスし、同事業を復活させた。現在ではペンケースやせっけん箱などを製造し、セルロイド特有の模様の美しさや上質な質感が好評となり、全国から注文が入っている。その功績が区の担当者の目に止まり、今回の認定となった。
セルロイド玩具について、奥山社長は「植物樹脂を使っているので環境にも優しく、子どもなどの手に触れても安全。いま一度その魅力を見直すべき」と話す一方、「現在の町工場は技術力が高いが、応用や商品開発への意欲が乏しい。当社ではプラスチック加工だけでなく、その技術力を応用した特許などでも評価されている。一つの産業だけでなく、技術の応用とアイデアの発想が、今後の町工場の存続・発展へのキーワードになっていく」と話す。