12月21日の冬至の日を迎え、葛飾区内の銭湯がゆず湯を行うサービスを行っている。
葛飾区内の銭湯は現在44軒存在しており、全盛期の3分の1まで減少。家風呂などの増加が主な原因だが、燃料費や修理費に膨大なコストが掛かることや、重労働による後継者不足なども挙げられる。
1957(昭和32)年から55年続く末広湯(葛飾区宝町1)にはこの日、16時の開店前からゆず湯目当ての常連客10人ほどが集まった。
葛飾区はしょうぶ湯とゆず湯の日に銭湯の利用促進を目的とした助成を行っており、通常450円のところを230円で入湯できる制度を行っている。2代目店主の螻(けら)弘幸さんは「利用客は減ってきているが、タクシーの運転手などが多く、足を伸ばしてゆっくり風呂に漬かりたいという常連客が多く利用してくれる。昔ながらの壁画も人気」と話す。
この日番台に登ったのはおかみの螻幸子さん(79)。幸子さんは同銭湯ができた前年にこの家に嫁ぎ、銭湯の営業を夫と共に支えてきた。55年目の冬至の日も開店前に番台に登り、銭湯の景色を見渡した。「55回目の冬至を迎え、今年も終わると実感する。銭湯はお客さんの姿などいろいろなもので季節を感じることができる。ユズを見ると年末の忙しい時期を思い出す」と話す。
現在は家族のみで経営している同銭湯だが、全盛期には手伝いや背中洗いを行う三助さんなどもいたという。幸子さんは「銭湯に通う人が少なくなったが、風呂場で会話を交わすのが楽しいお客さんもまだいる。時には若い人も来てくれるのがうれしい」とも。
現在は16時から1時間半ほど、番台業務に就く幸子さん。「最近はひざが悪いので番台に立つのもしんどいと思ったが、休むと常連客から心配がられる。年齢を重ねてもお客さんと会話することで心も温かくなるので、まだまだ続けていける。風呂に入って会話をしながら背中を流す、その行為が家族や友情などを深めていくのにいいのでは。だって隠すものは何もないのだから」と、55年にわたって番台から見たコミュニケーション論を笑顔で披露した。
営業は23時30分まで。