葛飾区郷土と天文の博物館(葛飾区白鳥3、TEL 03-3838-1101)で12月21日、区の伝統的な雑煮の試食会と、しめ飾りづくりが行われた。
企画のテーマは「楽しい正月を迎えるために」。午前に雑煮、午後にしめ飾りと、それぞれ分けて参加者を募り、合わせて40人ほどが参加した。
雑煮の回では、初めに同館学芸員から正月を迎えるための準備について区の正月行事を題材に講義。各家庭や地域によって異なる習慣があることについても触れ、正月のしきたりや文化について理解を深めた。
今回の主役である雑煮は、「葛飾雑煮」と呼ばれる2種類の味の食べ比べ。いずれもしょうゆやみりん、塩で味を調えたすまし汁だが、一方は、昆布とハゼでだしを取り、ハゼも具材として盛り付けた。もう一方は、かつお節のだしをもとにヤツガシラを大きく切って入れた。それぞれダイコンとニンジン、小松菜を入れ、つきたての餅が入る。どちらも区内で昔から食べられていたもので、区内の民家に聞き取りをして再現したもの。ハゼに関しては、10月から川で釣り始め、炭火で焼いて天日干しにして準備したとっておきの食材。
同館の講座に初めて応募した小西啓子さん(72)は「葛飾で生まれたけど母が高松出身なので、葛飾の雑煮とはどんなものだろうと興味を持った。子どものころ、よく江戸川でハゼが釣れたことを思い出した」と振り返った。雑煮作りを担当した学芸員は「食べることを通じて、葛飾の文化を関心を持ってほしい」と呼び掛けた。
午後には、葛飾区伝統工芸士の清田敏雄さん(91)と長男の一彦さん(61)から手ほどきを受けた「しめ飾り」が行われた。敏雄さんは30年ほど、しめ飾りづくりを教えてきたという。区内では、農閑期の副業としてしめ飾りを作り出荷していた記録も残っている。今回は、小型の輪飾りである「ジョウワ」、神棚に飾る「ホソ」、玄関に飾る「玉飾り」の3つに挑戦した。
子ども連れも多く、参加者それぞれが清田さんに聞いたり、身近な人と教え合ったりしながら、縄を編んでいった。難易度の高い玉飾りは飾り付けだけ作業。思い思いの飾りを仕上げた。敏雄さんの後を継ぐ一彦さんは参加者に「体験しながら親子でも楽しめるようなことを、これからもやっていきたい」と話していた。