都立葛飾ろう学校(葛飾区西亀有2)の「かつろうキッチン」が地元住人を中心に話題を集めている。
月1回、同校で調理師を目指す生徒たちが、同校の会議室を使ってレストランを運営する同企画。約80食を用意するが、毎回完売。告知は地域の自治会でポスターを掲示する程度だが、利用者からの口コミを中心に輪が広がっている。
同校は、2005年に調理師養成施設を併設。全国のろう学校で唯一、専攻科食物課程をすべて修了することで、国家試験免除で調理師免許が取得できる。同企画を取り組みを始めたのは、2013年6月。地域との交流を深めることと、生徒自身のコミュニケーション能力を養うことを目的としている。
厨房では、テキパキと調理や盛りつけをこなす生徒たち。12月20日の開催で16回目を迎える。
最初は聴覚に障害があることで、厨房内の動線もおぼつかず、互いの動きがぶつかってしまうことも。現在は、手話や体にタッチをしながらコミュニケーションを取り、スムーズに働いている。接客も生徒自身が行い、呼び込みから案内、配膳、後片付けまで、常にお客さんに目を配らせながら心地よい空間づくりも行う。
同日のメニューは、「チキンソテーセット(サラダ、デザート付)」(800円)で、クリスマスを意識したもの。準備は約3週間前から行われ、メニューの考案・仕入れ・調理とすべて生徒自身が行う。ふるまう料理の数々は、「資生堂フルーツパーラー」の元総料理長に習ったものをアレンジという本格的な味わい。
同企画に訪れるのは6回目という家族連れからは、「近所に住んでいて、たまたま掲示を見て来たのが始まり。安くておいしいので、毎月スケジュールが合う時は来ている。毎回趣向が違って楽しみ」と話す。
教諭の柏倉克哉さんは「この生きたコミュニケーションは、彼らが社会に出て、いざ厨房に入った時に必要なことで、調理実習では習得できない。一方通行にならないよう、より多くの人に訪れてもらい参加者からの意見やアドバイス、地域や企業とのコラボレーションなども期待したい」と話す。運営する生徒たちは、「やりがいを持てた」「(一連の動きのなかから)自分の得意なことが分かった」などの感想も。
次回の開催は1月31日。時間は11時~14時(ラストオーダー13時30分)。レストランの他に、月1回木曜の15時30分~16時30分にお菓子販売も実施する。