立石駅前通り商店街の小林薬局(立石1)で6月27日、美術家・柵木愛子さんと舞踏家・中西晶大さん、箏(そう)奏者・伊藤江里菜さんによる共同イベント「時は嘘よりも人を愛する」が開催された。
同イベントは、葛飾の文化芸術に関わる人や拠点をつなぐプラットフォームづくりを目指す有志団体「川の間」が主催。「川の間」プロジェクトの一つ「小林薬局における空間と環境に関するスタディ」の中間発表と位置付け、昨年11月から店内の「モノや空間、周囲の環境」を見つめながら制作を行ってきた場がイベントに合わせて公開。
当日は、13時~18時の間に、1回15分ほどのパフォーマンスが4回披露された。「かぜに新登場」「大正殺虫剤」などの見覚えのあるコピーや栄養ドリンク、芸能人の顔などの切り抜かれた幕が所狭しとぶら下がる店内。かつて薬局で取り扱っていた商品の広告の垂れ幕やのぼりを、柵木さんが手を加えていったもの。「広告は嘘でできている」と感じていた柵木さんが、すでにその役目を終えた広告と向き合い変化していった心境が、今回の空間づくりに反映されている。商店街の一角から響く箏の音色と、それに合わせて踊るパフォーマンスに、近所の人だけでなく遠方から訪ねて来た人、観光客が足を止めた。
近所に住む吹野文昭さんは「美術的なことはわからないけど、感覚的にパッと面白い空間だと思った。分かりやすくて楽しい」と感想を話す。この日のために横浜と新宿からやってきた男性2人は、すべての回を見終えて、「毎回違っていて楽しかった。この町にも初めて来たけど、こうして色んなところへ連れていってもらえるから面白いよ」と立石をあとにした。
演奏を終えた伊藤さんは「お客さんの顔を見ながら、踊りを見ながら、自分自身楽しく演奏できた」と、一日を振り返った。「こういう(商店街のような)場所だから、ライブハウスのような場で音楽を聴く以外の方たちにも気軽に聴いてもらえて良かった」と続け、初めての試みに手応えを感じたという。
今回のパフォーマンスは、箏も踊りもほぼ即興。踊りを披露した中西さんは、開演前に毎回「スケッチ」に出掛けて、商店街を歩く人々の動きを見て取り入れた上で、自分なりの踊りにしていた。「ここの日常に流れているものと寄り添おうと思って」と中西さん。「一回(人の動きを)自分の中に取り込んで、そこから発展させてオリジナルを出してくる。だから商店街ありきの表現。ここならではの踊りを4回できた」と、踊りの種を明かした。
同プロジェクトは、今後も続ける。次回は9月にイベントを行う予定。