葛飾柴又寅さん記念館・山田洋次ミュージアム(葛飾区柴又6)がリニューアルされ、4月8日、山田洋次監督や倍賞千恵子さんを迎えて式典が行われた。
同館・同ミュージアムは、映画「男はつらいよ」の魅力と山田洋次監督の創作への思いを表現する施設。多くの寅さんファンが訪れる同館は一昨年、通算来場者数500万人を突破。寅年である今年、同館は25周年、同ミュージアムは10周年となる節目の年を迎える。
同館・同ミュージアムは、これまでも定期的なリニューアルを実施しており、「男はつらいよ」の舞台を作り上げた資料の展示や、世界観を実体験できるような体験型のアトラクション設置など、さまざまなコンセプトの催しを行っている。
今回のリニューアルでは、同館プロローグ(入場エリア)に洋画家・薮野健さんが描いた柴又の風景画の映像演出を新設。ミュージアムには大船撮影所のジオラマを設置した。毎年夏休みの期間限定イベントとして開いていた謎解きイベントも常設化し、AR技術を使った謎解きラリーをいつでも楽しめるようにした。
式典のゲストとして、寅さんシリーズで長年にわたりメガホンを取った山田洋次監督、寅さんの妹・さくら役を演じた倍賞千恵子さん、今回新設されたプロローグを手掛けた藪野健さんが登壇。山田監督は昨今の暗いニュースが多い世間を振り返り、「寅さんや寅さんの家族のように、優しくて温かくて、複雑な人間関係を上手に処理しながら仲良くしていく術を知るような人が町民として育つには何が必要なのか。そういうことを考えられるような記念館になれば」と、「寅さんシリーズで描いた人々の温かさをもう一度振り返れる場所として活用してほしい」と呼びかけた。
倍賞さんは「ここに来る度に『お兄ちゃん、まだいるんだ』と思えちゃうんですね」と、寅さんを身近に感じている様子。「映画の仕事は本当にたくさんの人がいなければ作品が出来上がらない。寅さん記念館も山田監督のミュージアムも、いろいろな人に見てもらおうというスタッフの方に支えられていると感じている。これからもたくさんの方に記念館に来ていただき、いろいろなことを知ってほしい」と、寅さんファンのみならず多くの人に来場を呼びかけた。
藪野さんは寅さんへの思いに触れると、「あんな風に生きてみたい、旅行してみたい、自由にやってみたいという一人一人の気持ちの集合体が寅さん」と、人々の中に寅さんがいるとし、その寅さんを生んだ柴又については、「柴又の街で絵を描いていると、店の人や通りがかった少年少女が話しかけてくれる。語りかけができるこの街が好き」と、人情味あふれる街への愛着を語った。
リニューアルした寅さん記念館・山田洋次ミュージアムは4月9日に一般公開を始めた。開館時間は9時~17時。第3火曜休館。