白鳥小学校(葛飾区白鳥3)で6月14日、復興支援イベント「あの日を忘れないために」が開催された。
同イベントは、震災の記憶を風化させないことを目的にした講演会とライブの2本立て。講演会は、同校と交流のある岩手県・大船渡小学校の前校長、柏崎正明さんを講師に招き、スライドショーで震災直後の同小学校の写真を投影しながら、当時の様子を解説。中でも校舎は津波にのまれたが、280人の児童全員が難を逃れることができた話には、多くの参加者が前のめりになり耳を傾けた。
柏崎さんは「津波が迫っている時、正門から出ては間に合わないと判断。山側のフェンスを乗り越えて避難させた。低学年の児童は職員が助け、車で避難しようとしている保護者も引き止めた」と当時を振り返り、「マニュアルにとらわれない臨機応変な対応と全員の協力で多くの命を救うことができた」と語った。また、震災当時や避難生活のことを書いた児童の作文も読み上げられた。
講演会後には、「さんりく大船渡ふるさと大使」のシンガーソングライター・濱守栄子さんのミニライブも。濱守さんは数日後、活動拠点を葛飾区から岩手県に移すため区内で行うライブは今回が最後。演奏の前に、濱守さんは「当たり前の日常がいつ失われてしまうか分からない。隣人や自分の命が突然失われるかもしれない。震災を人ごとだと思わずに、日頃から防災や避難先について家族で話し合ってほしい」と訴えた。公演後、「今日聞いたことを1人でもいいから伝えてほしい。震災の記憶を語り継いでいくことによって、誰かの命が助かるかもしれない。そうすればここで歌ったことに意味がある」とも。
白鳥小のPTA会長・安藤慎二さんは同イベントを主催した目的について「被災地の人は、震災の記憶が薄れていくことを何よりも恐れている。震災体験者の話を聞き、未来へ語り継ぐという支援もあると思うので、これからも続けていきたい」と話す。
講演会に参加した佐藤季美さんは「平穏な日常の中で薄れつつあったが、濱守さんの話を聞いて震災当時を思い出した。あらためて復興支援の大切さを認識するとともに、防災意識が高まった」と話す。