葛飾区新宿の書道教室「新宿(にいじゅく)学園」(葛飾区新宿2)学園長の鈴木翠峰(すいほう)さんが3月で書道歴90年を迎えた。
翠峰さんは94歳。4歳の頃に父親に連れられ、近所の寺で書道を始めたことがきっかけだったという。「当時は自分の意思で始めたわけではなかった」が、家業の農業を手伝う傍ら、その後も書道を習い続けたという。
しかし事情により農業の継続が困難となった1965(昭和40)年、新たな家業として「新宿学園」を設立。子どもから大人まで、地域の人々に書道を教え始めた。翌年には、当時の中村梅吉文部大臣率いる海外視察の一団に同行し、世界16カ国を歴訪。各国の文部大臣や教育関係者に書道を紹介する大役を果たした。
同教室では現在、週3回の学童部に加え、土曜の一般部を開講。あらゆる世代に書道を指導している。生徒の最年少は4歳で、最年長は80歳以上。これまで翠峰さんが指導した人数は3300人を超えるといい、現在は講師で娘の小川峰星(ほうせい)さん、広報担当で孫娘のYurieさんと共に運営に当たる。
同教室設立から今年で57年目。半生を過ごした学園での時間を「3000人以上の生徒に教えていたら、いつの間にか今日を迎えていた」と振り返る。長年生徒に伝え続けた上達の秘訣(ひけつ)は「努力。ひたすらに書き続けること」と極めてシンプル。今も「上達するには数多くの字を書き、練習する以外にはありません」と、日々の積み重ねこそが上達の道であると説き続けている。
翠峰さんは書道と共に歩んだ90年を、「楽しみながらやってこられた。(この楽しみは)一生もの」と振り返る。今後の目標は「続けられる限り書道を続けていきたい」と、次の5年、10年を目指すという。自らの信念である「学問に近道無し」を、これからも体現し続けるという。