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葛飾の刀鍛冶が講演会-「剣道で日本刀使ってほしい」とも

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 郷土と天文の博物館(葛飾区白鳥3)で6月7日、「日本刀の特徴と作り方」講演会が行われた。

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 同講演は、東京都無形文化財・葛飾区無形文化財保持者である吉原義人(よしはらよしんど)さんが登壇。刀鍛冶による日本刀の作り方と特徴を伝えるということで、同日は雨の中140人を超える見学者が集まった。

 吉原さんは1943(昭和18)年葛飾区生まれ。刀鍛冶の祖父・吉原國家さんに師事し、小学生から「ふいご」など作刀の工程に携わる。1965(同40)年に文化庁認定刀匠受賞。1972(同47)年に新作名刀展において高松宮賞など上位特賞を総なめにし、1982(同57)年には特賞を複数回以上受賞することで認定される「無鑑査」となる。最高勲章である「伊勢神宮の御神刀」の指名を3度受けるほか、刀匠として唯一メトロポリタン美術館、ボストン美術館に作品が陳列されている。

 同講演ではスライドショーを使い、「鍛錬、火造り、生仕上げ、土置き、焼き入れ」など、原料の玉鋼から一振りの日本刀ができるまでの過程を解説。後半は参加者からの質問を受け付けた。「なぜ刀文をつける必要があるのか」という質問に対しては、「日本刀は単なる武器ではなく精神的なよりどころ。だからこそ、それにふさわしい美しさが必要」と答えた。「武器でないならば、切れ味は重視していないのか」という質問には「日本刀は、機能美を追求した先にたどり着いた美しさを鑑賞するもの。見てくれだけの刀には本当の美しさは宿らない。伝統的な作り方できちんと切れる刀を作るからこそ美しい」と話す。

 公演後、新小岩在住の齋藤文哉さんは「職人がどんな気持ちで日本刀を作っているのか知ることができて良かった」と話す。「日本刀は美しいということを繰り返して言っていたのが印象的」とも。

 吉原さんに日本刀業界の現状について聞くと「うちの工房には内弟子が6人いて、ほかにも希望者を多く断っている状態なので後継者問題は感じたことがない。だが、次世代を取り巻く環境には不安がある」と話し、「昔と比べて購入する人が減っている。現在、工房の売り上げの半分以上は外国人が占めているが、もっと日本人にも日本刀の魅力を伝えていかないと弟子の刀鍛冶が心配」と危惧。具体的な方法として「剣の道を究めるはずの剣道が、真剣を使わないのはおかしいのではないか。日本刀を使ってこそ剣の神髄を悟ることができる。このようなところから変化を起こしていきたい」と意気込んだ。

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