葛西臨海水族園(江戸川区)を脱走したと見られるフンボルトペンギンが、5月23日、金町浄水場(葛飾区金町浄水場)付近の江戸川で目撃され、周辺地域で話題となっている。
3月4日に「家出」したペンギンは、5月になってから東京湾などで目撃された。湾内で捕獲作戦など行われたが直前に逃げられることも。現在は江戸川中心に目撃情報が寄せられている。
ペンギンの品種はフンボルトペンギン。主に南米のチリやペルーを生息地としており、同館の教育普及係の杉野猛さんは「南極など寒地に生息するオウサマペンギン・イワトビペンギンなどと異なり、日本の環境で一年中住むことが可能。同館でも一年中観察できる品種」と話す。
家出したフンボルトペンギンは現在1歳2カ月で、「今年の夏に親ペンギンと同様の毛色に変わる予定。人間で言えば青年一歩手前」(杉野さん)で、ニュース映像については「報告を受けた画像では痩せておらず、健康体であることがうかがえる。しかし、海水魚を食べるペンギンは淡水魚を食べることでナトリウム不足に陥る。そこが心配」と「親心」を見せる。
発見された金町浄水場は河口から約19キロ離れており、今までの目撃情報では最も遠い位置になる。発見場所となった金町浄水場付近では、ペンギンの情報を聞きつけた見物人数人のみがいるのみで、変わった状況はなかった。
ペンギンが通過したと見られる「矢切の渡し」で15年以上わらじのお守りを製造・販売している、通称「わらじおじさん」は、ペンギン発見の情報を聞き、「このあたりは都内でありながら多くの自然環境があり、コイやフナ、アユなども採れる場所。ペンギンも豊富な資源を求めて葛飾まできたのでは。もし会えるのであれば矢切の渡しで一度会いたい」とほほ笑む。
ペンギンの観察を目的に来た50代の女性は「地元でニュースになっていたので、本当にいるのか気になって来た。いないとはわかっていても期待してしまう」とデジタルカメラ片手に観察を続けていた。
今後について、杉本さんは「ペンギンは非常なデリケートな生き物で、捕獲やちょっかいを出すと人間不信に陥る可能性もあり、さらに捕獲が難しくなる。現在は目撃情報を集め、どのあたりに生息しているのかを探している。もしペンギンを見つけたら捕獲しようと思うのではなく、親のような温かい目で見守って館に連絡してほしい。健康なうちに帰ってきてほしい」と訴える。
連絡は同館事務室(TEL 03-3869-5153)。同館閉館後も情報を受け付けている。