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郷土と天文の博物館で銭湯の背景画制作-企画展「かつしか街歩きアーカイブス2」

一心にペンキ絵を描く中島さん

一心にペンキ絵を描く中島さん

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 葛飾区郷土と天文の博物館(葛飾区白鳥3、03-3838-1101)の講堂で7月28日、ペンキ絵師・中島盛夫さんによる銭湯の背景画の公開制作が行われた。

完成した背景画と町田さん、中島さん

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 公開制作は、同日より始まった企画展「葛飾探検団 かつしか街歩きアーカイブスPart2」のオープニングイベントの一環。120人ほどの観客が集まった。企画展は、同館のボランティアが、葛飾の暮らしや文化、風景を、近代以降どのように変化したかを調査・研究し、そこから得られたデータを集約。葛飾に起きた変化と、「今」をアーカイブス化したもの。前回は2009年に行われ、2回目を迎えた今回は、「銭湯、路地、煙突、商売の風景、河川と生活」などに焦点を当てる。

 当日は13時開始。まず庶民文化研究家の町田忍さんが記念講演。銭湯の歴史や、関東大震災以降に普及した、寺社仏閣を模した「宮造り(みやづくり)」の外観で、「背景画」と呼ばれるペンキ絵がある浴室にかかる「東京型銭湯」を中心に話を展開。地方の銭湯との違いや、建築の面白さなどを解説した。

 14時過ぎ、既に設置済みの高さ2メートル50センチ×幅4メートル80センチのパネルでの公開制作がスタート。現在は2人しかいないペンキ絵師の一人、中島さんが壇上に上がり、入念な養生(ようじょう)作業から始まった。本来、銭湯の背景画は年に1度広告収入を得て書き替えるものであるため、上から高さ1メートル80センチ以下のところにも養生を施し、下部に広告が入ることが想定された大きさとした。中島さんより観客に「海、湖、渓流とどれを描くか」と質問があり、「海」という声が多数のため、富士山と海の組み合わせに決定。「いかに時間的コストを削減するか」という点から、ペンキは光の三原則である赤・青・黄と白のみを使うという。その4色をたくみに混ぜ合わせ、中島さんはビールケースを踏み台に、板重(ばんじゅう)をパレットに、「ずんどう」と呼ばれるはけで描き始めた。

 今回は公開制作のため真っ白なパネルだが、通常は以前描かれたペンキ絵の上に描くと説明。まず水色のペンキで大枠の位置取りをし、富士山の頭頂部を決めるとローラーで空を塗りつぶしていった。途中、町田さんの解説を加えながら制作が進行。今回は西伊豆辺りからの富士山を描いたが、「正確な風景画」ではなく、ある程度デフォルメした「日本人の理想とする美しさを描く」とも。ローラーを道具として使い始めたのも中島さんが始めてで、画面のモチーフとしてよく出てくる「松」を描くことがとても難しいといったエピソードも披露した。

 下絵ができあがった段階で1度休憩を挟みつつも、2時間ほどで一気に描き上げた。最後に日付と「ナカジマ」とサインを入れて完成。会場は完成と拍手に包まれた。完成したペンキ絵は、同展のために同館入り口左に再現された、疑似銭湯の背景画として期間中、見学することができる。

 中島さんは「大体、男湯側3時間、といった配分で描く。いかに浴室を明るく楽しく見せるかを考え、構図は1人で決めなくてはダメ」と話し、「富士の頭頂部を描く時が一番難しい。いつもその日に描いたものが一番満足のいくものにしないと終了することができない」とも。銭湯の魅力については、「銭湯は『浮世の垢(あか)を落とす場』。体の汚れを流すためだけのものではなく、癒やしやコミュニケーション、教育の場であり、精神的なくつろぎを得られところ。ぜひ銭湯に入ってほしい」と呼び掛けた。

 開館時間は9時~17時(祝日を除く、金曜・土曜は21時まで)。月曜・第2・4火曜休館(祝日の場合は開館、翌日休み)。入館料は、大人=100円、小中学生=50円。9月15日まで。

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