葛飾区の伝統工芸士に初の女性認定-「ほれる」仕事について話す

「家族を守りながら家で仕事をする職人は、女性に向いている」と話す松井さん。仕事に集中すると時間を忘れるほど「仕事に惚れ」ているという。

「家族を守りながら家で仕事をする職人は、女性に向いている」と話す松井さん。仕事に集中すると時間を忘れるほど「仕事に惚れ」ているという。

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 葛飾区は11月30日、区の伝統工芸士として着物の染色に使う型紙職人の松井喜深子(きみこ)さん(45)を認定した。

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 同制度は、区内の伝統工芸品の声明を高めるとともに、区内伝統産業の振興を目的としたもので、1996年に創設。伝統工芸に携わる技術者のうち、高度の伝統的な技術・技法を保持する人を認定する。昨年までの認定者は64人。松井さんは同制度で認められた65人目の伝統工芸士で、女性としては初の認定となる。

 松井さんが手がける染色用型紙とは、手ぬぐいなどの染め物のデザインを小刀で紙に切り込んで作る染色用の型紙のこと。松井さんの生家は代々続く「形紙職人」として受け継がれており、松井さんで4代目。父の喜松さんも14年前に同認定を受けている。

 松井さんは長女として生まれ、高校卒業後に父である善松さんに弟子入り。「丁寧に教えるというよりは、背中を見て覚えさせるタイプ。毎日父の動きを盗むのが大変だった」(松井さん)と話し、修業時代は無給の生活が続いたが「少年野球チームの子どもたちに勉強を教えて小遣いを稼いでいた」と振り返る。

 修行を始めた当時はバブル全盛期で、同級生たちは会社員やフリーターなどになった。「皆遊んでいてうらやましかったが、仕事の面白さの方が優先した。自分は、負けん気が強く挫折することが悔しい性格。この性格を与えてくれた師匠である父に感謝をしたい」とも。

 修行を積み、一人前として父と仕事をしていた2002年、善松さんが亡くなり、松井さんが急きょ4代目として家業を継ぐ。職人として現在まで仕事を続けられた背景には、夫や2人の子どもの理解と支援のおかげと話す松井さん。「職人の仕事は自宅で行えることがほとんど。理解さえあれば子育てしながら仕事を継続できる。手先で行う職業でもあり、女性に向いているのでは」と話す。

 25年間、型紙彫り一筋の松井さん。型紙職人として長続きしてきたことについて、「仕事にほれろ、と父に言われ続けてきたが今になってその意味がわかってきた」と話し、「例えば女性の浴衣の後ろ姿をのぞき込んでその姿を研究したり、同じ柄でも短時間にさらに美しくするために考えていたりすることも。主人からは『本当に好きだな』と笑われることもある。言われてつくづく自分がこの仕事にほれ込んでいることに気づく。まずは好きになることが重要」と4代100年以上続く型紙彫りの奥深さに触れる。

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